ふかふかしたカーペット。
馬鹿でかい上に極端に薄すぎる液晶テレビ。
派手な装飾がこれでもかというほどほどこされたクローゼット。
そして、必要以上に清潔に保たれているであろう、純白のシーツに包まれた、柔らかいベッド。
俺は生唾を飲み込んで、あたりをきょろきょろと見渡していた。はたからみれば、あからさまに挙動不審な姿だっただろう。突然月が二つある魔法世界に召喚された犬になったような気分である。
手を伸ばせば簡単に届く距離にあるなにもかもが、俺にとっては未知のなにかがイバラの如くまとわりついている気がする。
なんとなく、真綿で首をしめられているようだ。
がちゃり、と背後で物音がした。
「……なにきょろきょろしてんの、あんた。もうちょとシャッキリしなさいよ、シャッキリ!」
両手に氷の入ったアイスコーヒーを抱え、器用に足で扉を開けながら登場したのは、言うまでもない、この部屋の持ち主である、涼宮ハルヒであった。
というかやめろはしたない。はいているスカートが捲れて、太股が露になっているぞ。下着は見えないが。
「わざとよ。別にパンツだってみせてもいいのよ?ただの布っ切れだもの、見られても別に問題はないわ」
なんてやつだ。お前には羞恥心と言うものがないのか、え?
「いいじゃない別に。自分の部屋だし」
中身を気にしろと言っているんだ。この部屋のな。
確かにお前の部屋かも知れんが、不純物が一つ、混じっているだろう?
「中身?それこそ笑っちゃうわね。今さらあんたにこんなもん見られたからってね、なんともないんだから」
いたずらっぽく唇のはしを歪めて、スカートをひらひらと左右にふる。
ちらちら除く水色のしましまやら輝く太ももやらが余りにも目に毒だ。
「なんならノーパン健康法でも試してみようかしら?欲しかったらあげるわよ、脱ぎたてのほかほか」
「いらん」
受験勉強をしようと、部屋に呼び出されてみればこれだ。まったく、挑発しているのがみえみえである。
「だいたいな、『キョン!勉強するわよ!』とか言っておきながら、きっちりアレが用意されてんのはなんだ?」
「あ、枕元のやつ見つけたのね。キョンにしてはなかなかの観察眼じゃない」
そうかい。だったらスカートをふるのはやめたらどうだ。自慢の観察眼が、そっちに引かれてしまうじゃないか。
「だってほら、キョンが我慢できないかもしれないじゃない」
俺は猿か何かか。
「ケダモノでしょ。この前なんか泣いて頼んでもやめてくれな」
「わかったやめろそれ以上言うな」
いや、違うんだ。あれはさるやんごとない事情があってだな……
「ちょっと髪の毛くくっただけでしょ」
すかさずハルヒが突っ込みを入れる。ポニーを馬鹿にするな。
とは言うものの、流石にすこしやり過ぎたかもしれない、とは思っていたのだ。いくらポニーテールが人類の至高かつ完璧きわまりなく一部の隙もない芸術品でありなおかつ以下略とはいえ、あのハルヒが涙を流して懇願する姿なんて、俺は始めてみたぞ。
てなわけで、俺は今日、確固とした決意を胸にここまで来たのだ。親がいない自宅にお呼ばれとかいうとんでもなフラグに耐えきるため、考えられ得るシチュエーションを286通りシミュレーションしたあげく、286回の鼻血の噴出を確認して、貧血になりながらここまでふらふら歩いてきたのだ。
「そんな俺に、ハルヒよ、なにができるというんだ?」
「………バカキョン」
呆れ果てたハルヒはそう言うと、部屋のはじっこにあった机の上から、おもむろに茶色い髪ゴムを取り出して、
「……はい、ポニー」
「すまんハルヒ、ちょっと無理だったみたいだ」
ため息をついたハルヒが、どうしようもなく輝いて見えた。



枕元においてあったのは、わっかの形のゴムだった。俗に言う近藤さんってやつだ。
視界の端にそいつを見ながら、俺はハルヒのマシュマロのように柔らかい二つの果実を、無骨な両手で堪能する。
「ぁっ……ん、ち、ちょっとキョ、んんっ……ふぁっ」
ぴくんっ、と全身をわずかに震わせて、ハルヒが嬌声をあげる。
どこをさわればどういう反応をするかまで、今の俺には手に取るようにわかった。
「ま、実際に手に取ってるんだがな。ほれ、右に左にっと」
「あ、くは、ぁっっ……!ゃ、んぁぁっ……ふ、ふざけ、なっ……ひぅぅっ!!」
先端をデコピンしてやると、のけぞって軽く痙攣する。
掴んだシーツが思いっきり引っ張られて、大きなシワがよっていた。
「そんで、このタイミングでこっちを弄ってやると、気持ちいいんだろう?」
荒い息をついて自分の肩を抱いているハルヒに囁いて、スッと右手を下に潜らせる。
そこには淫靡な芳香を漂わせる、いやらしいことこの上ないクレバスが口を開けていた。
「ぁ、あっ!!だ、だめ、そこはっ……ん、ぃっ―――――っっっ!!」
とたんにびくんびくんと跳ね回る。
息も絶え絶えなところに容赦なく、というのが、最近のツボだったりする俺は、そのまま二本、指をズチュっと差し入れた。
「ぁ、ふぁぁぁぁっっっぁ、ぃっ……く、ひぁ、んっ―――っあ、はぁっ……ひやぁああ!!!」あっけない。
思いっきり叫んだかと思うと、ハルヒはぐったりと弛緩して、ベッドに深く沈み込んだ。
「……なんだハルヒ、まだ前戯だぞ?」
「はっ……はぁっ……ぁっ……」
激しく肩を上下して、荒い呼吸を繰り返すハルヒ。返答する余裕もなさそうだ。
……正直待ってられん。
俺は視界のはじっこに引っ掛かっていたゴムをひっつかむと、なれた手つきで使用、手っ取り早くハルヒの秘部にあてがった。
「ぁっ……!ちょっと、まっ……て、キョん、お願……あ、あああああ!!」
一呼吸の後、俺はハルヒの声を無視してねじ込んだ。
あまりの快感に身をくねらせて逃げるハルヒを、容赦なく両手で掴んで、勢い良く腰をふる。
「ぃっ……か、はぁぅっ……!!ぁ、ふぁぁあっっ……!!!」
よだれを垂らして喘ぐハルヒ。意識は半ばトび、思考能力はかけらも残っていないだろう。
指先一本に至るまで弛緩し、しかし反り返る背中にあわせて硬直し……
「いっ……ぁ、あああ、ひっ………くぁ、あっ――――っっっ!!!!!!」
ひときわ大きく甲高い声をあげたかと思うと、一気に中が収束した。
いきなり引き締まったそれの、圧倒的な快楽に耐えきれず、俺の方も頂点へと達する。
ずちゅ、っと引き抜いたとき、すでにハルヒは深い眠りの中だった。



「……ばか」
「ははは……」
毛布にくるまって俺の腕の中に収まるハルヒは、不機嫌の具現のような声を出していた。
「……勉強するはずだったのに……」
「……満更でもなかったくせに」
しかし、俺は知っている。
「っ……!バカキョン!デリカシー無しの鈍感男!」
「んなっ……って、首筋を噛むな!」
その顔が。
「だって……好きなんだもんっ……!」
隠しようもない、笑顔で彩られていることを。
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